第4

章3-第4

 

聴:

 

 

トラが木登りの出来ない理由

 

むかしむかし、中国武術の得意なトラが、沖縄の空手が強いと聞いて、沖縄にやって来ました。

 トラは沖縄の町にやってくると、威張った態度で言いました。
「おれさまは、中国武術の達人だ。中国武術と空手、どちらが強いか勝負だ!」 
「・・・・・・」
「どうした。おれさまの中国武術に、恐れをなしたのか?!」 
「・・・・・・」
 沖縄の動物たちは、今まで見た事がない大きな体のトラを怖がって、誰も勝負をしようとはしません。
「誰も勝負をしないのなら、沖縄をおれさまの物にするぞ!」
 その時、一匹の小さなヤマネコが、トラの前に進み出ました。
「いいでしょう。わたしがお相手をしましょう」
 このヤマネコは、沖縄空手の先生です。 
 トラは自分の半分にもみたないヤマネコを見て、ゲラゲラと笑いました。
「がはははは。お前の様なチビ助が、勝負だと? よし、お前なんかひとひねりだ。アチョーー!」
 トラがヤマネコに飛びかかりましたが、何とヤマネコはトラの攻撃をヒラリとかわすと、体の大きなトラをコテンパンにやっつけてしまったのです。
「何だと? ・・・まだまだ、これからだ!」
 トラは再び勝負を挑みましたが、何度やってもヤマネコにはかないません。 
 負けを認めたトラは、ヤマネコに両手を合わせてお願いしました。 
「先生! どうかわたしに、先生の沖縄空手を教えて下さい!」 
「いいでしょう。修行はつらいですが、頑張るのですよ」
 こうしてトラはヤマネコに弟子入りを許されて、空手の修行を始めたのです。

 空手を始めたトラは、もともと武術の才能があったので、見る見るうちに上達していきました。
 一年が過ぎた今では、ヤマネコに次ぐ空手の名人です。 
 それを知ったヤマネコは、 
(このままでは、トラはわたしよりも強くなるだろう。そうなればいつか、わたしを倒して沖縄を支配するかもしれない)
と、思い、数多くある空手の必殺技の一つを教えなかったのです。

 ある日の事、ヤマネコの悪い予感が的中して、トラがヤマネコに勝負を挑んできました。
「師匠。おれはお前よりも強くなった。今こそお前を倒して、沖縄を支配してやる!」 
「よろしい。わたしはお前を全力で倒し、中国へ送り返してやります」
 トラとヤマネコの空手の腕前は互角でしたが、トラはもともと中国武術が使える分有利なので、次第にトラが優勢になりました。 
(まずい、このままでは負けてしまう)
 そう思ったヤマネコは、トラには教えていない空手の必殺技を使いました。 
 それは、木登りです。
 ヤマネコは身軽に木に登ると、木の上でトラを待ちかまえました。
「なんだ師匠、そんなところに逃げ込んで、もう降参か!」 
 トラもヤマネコを追いかけて木に登ってきましたが、木登りを教えてもらっていないトラは、木にしがみつくだけで精一杯です。
「すきあり!」
 ヤマネコは木にしがみついて動けないトラをコテンパンにやっつけて、中国に追い返してしまいました。

 そんなわけでトラは、中国武術も沖縄空手も使えるとても強い動物ですが、ヤマネコに木登りを教えてもらえなかったので、今でも木登りが下手なのだそうです。

 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

トラが木登りの出来ない理由

 

むかしむかし、中国ちゅうごく武術ぶじゅつの得意とくいなトラが、沖縄おきなわの空手からてが強つよいと聞きいて、沖縄おきなわにやって来きました。

 トラは沖縄おきなわの町まちにやってくると、威張いばった態度たいどで言いいました。
「おれさまは、
中国ちゅうごく武術ぶじゅつの達人たつじんだ。中国ちゅうごく武術ぶじゅつと空手からて、どちらが強つよいか勝負しょうぶだ!」 
「・・・・・・」
「どうした。おれさまの
中国ちゅうごく武術ぶじゅつに、恐おそれをなしたのか?!」 
「・・・・・・」
 
沖縄おきなわの動物どうぶつたちは、今いままで見みた事ことがない大おおきな体からだのトラを怖こわがって、誰だれも勝負しょうぶをしようとはしません。
「
誰だれも勝負しょうぶをしないのなら、沖縄おきなわをおれさまの物ものにするぞ!」
 その
時とき、一いち匹ひきの小ちいさなヤマネコが、トラの前まえに進すすみ出でました。
「いいでしょう。わたしがお
相手あいてをしましょう」
 このヤマネコは、
沖縄おきなわ空手からての先生せんせいです。 
 トラは
自分じぶんの半分はんぶんにもみたないヤマネコを見みて、ゲラゲラと笑わらいました。
「がはははは。お
前まえの様ようなチビ助すけが、勝負しょうぶだと? よし、お前まえなんかひとひねりだ。アチョーー!」
 トラがヤマネコに
飛とびかかりましたが、何なんとヤマネコはトラの攻撃こうげきをヒラリとかわすと、体からだの大おおきなトラをコテンパンにやっつけてしまったのです。
「
何なにだと? ・・・まだまだ、これからだ!」
 トラは
再ふたたび勝負しょうぶを挑いどみましたが、何なん度どやってもヤマネコにはかないません。 
 
負まけを認みとめたトラは、ヤマネコに両手りょうてを合あわせてお願ねがいしました。 
「
先生せんせい! どうかわたしに、先生せんせいの沖縄おきなわ空手からてを教おしえて下ください!」 
「いいでしょう。
修行しゅぎょうはつらいですが、頑張がんばるのですよ」
 こうしてトラはヤマネコに
弟子入でしいりを許ゆるされて、空手からての修行しゅぎょうを始はじめたのです。

 空手からてを始はじめたトラは、もともと武術ぶじゅつの才能さいのうがあったので、見みる見みるうちに上達じょうたつしていきました。
 
一いち年ねんが過すぎた今いまでは、ヤマネコに次つぐ空手からての名人めいじんです。 
 それを
知しったヤマネコは、 
(このままでは、トラはわたしよりも
強つよくなるだろう。そうなればいつか、わたしを倒たおして沖縄おきなわを支配しはいするかもしれない)
と、
思おもい、数多かずおおくある空手からての必殺ひっさつ技わざの一ひとつを教おしえなかったのです。

 ある日ひの事こと、ヤマネコの悪わるい予感よかんが的中てきちゅうして、トラがヤマネコに勝負しょうぶを挑いどんできました。
「
師匠ししょう。おれはお前まえよりも強つよくなった。今いまこそお前まえを倒たおして、沖縄おきなわを支配しはいしてやる!」 
「よろしい。わたしはお
前まえを全力ぜんりょくで倒たおし、中国ちゅうごくへ送おくり返かえしてやります」
 トラとヤマネコの
空手からての腕前うでまえは互角ごかくでしたが、トラはもともと中国ちゅうごく武術ぶじゅつが使つかえる分ぶん有利ゆうりなので、次第しだいにトラが優勢ゆうせいになりました。 
(まずい、このままでは
負まけてしまう)
 そう
思おもったヤマネコは、トラには教おしえていない空手からての必殺ひっさつ技わざを使つかいました。 
 それは、
木き登のぼりです。
 ヤマネコは
身軽みがるに木きに登のぼると、木きの上うえでトラを待まちかまえました。
「なんだ
師匠ししょう、そんなところに逃にげ込こんで、もう降参こうさんか!」 
 トラもヤマネコを
追おいかけて木きに登のぼってきましたが、木き登のぼりを教おしえてもらっていないトラは、木きにしがみつくだけで精しらげ一いち杯はいです。
「すきあり!」
 ヤマネコは
木きにしがみついて動うごけないトラをコテンパンにやっつけて、中国ちゅうごくに追おい返かえしてしまいました。

 そんなわけでトラは、中国ちゅうごく武術ぶじゅつも沖縄おきなわ空手からても使つかえるとても強つよい動物どうぶつですが、ヤマネコに木き登のぼりを教おしえてもらえなかったので、今いまでも木き登のぼりが下手へたなのだそうです。

 

おしまい

 
 
 
 
 
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