第4

章2-第4

 

聴:

 

 

寝ているだけの仕事

 

むかしむかし、あるところに、働くのが大嫌いな男がいました。
 毎日毎日、男は家で寝てばかりいたので、ついにお金もお米もなくなってしまいました。
(何もかも、なくなってしまったな。まあ、働かないといけないのはわかるが、汗水たらして働くなんて、まっぴらごめんだ。・・・ああ、どこかに、寝ているだけの仕事はないかなあ)
 男が、そんな都合の良い仕事を探しに外を歩いていると、向こうから見せ物小屋の親方がやってきました。
 この見せ物小屋の親方は、珍しい動物を見せる商売をしているのです。
「なあ親方、どこかに、寝ているだけで金もご飯ももらえる仕事はないか?」
 とんでもない相談ですが、それを聞いた親方は手を叩いて言いました。
「ある、ある、あるぞ! 実は今、そんな仕事をしてくれる人を探していたところだ」
「へえ。そいつはありがたい。親方、ぜひともわしに、その仕事をさせてくれ」
「いいとも、仕事場までついて来い」
 男は喜んで、親方の後について行きました。

 親方は町はずれで、獅子(しし→ライオン)やトラの見せ物小屋を開いていました。
「へえ、これが見せ物小屋か。・・・ところで、おれはどんな事をすればいいんだ?」
「なあに、簡単さ。ただ、このおりの中で寝ているだけだよ」
「何だって?! 獅子やトラと一緒にか?!」
 びっくりする男に、親方は声をひそめて言いました。
「心配するな。実はな、少し前に見せ物のトラが死んでしまって、困っていたところなんだ。そのトラの皮をはいであるから、お前さんはそれを着て、おりの中で寝ていてくれればいい」
「何だ、トラの身代わりか」
「そう言う事だ。ただ寝ているだけで、時々エサをもらい、おまけにお金までもらえるんだ。いい話だろう」
「確かに。なまけ者のおれにぴったりの仕事だな」
 そんなわけで、親方はさっそく男にトラの皮を着せて、おりの中へと入れました。

 トラの身代わりは確かに楽な仕事で、あっという間に見世物小屋が終わる最後の日となりました。
(ああ、楽な仕事だったな)
 男が寝ながらそう思っていると、集まって来た人たちに親方が言いました。
「さあ、入った、入った。今日でもうお終いだよ。さて、そこで最後に、トラと獅子を一つのおりに入れて、けんかをさせて見せようではないか」
 そう言って親方は、隣のおりに入れていたライオンを、トラの毛皮を着た男のいるおりに連れて来たのです。
 さあ、トラの毛皮を着た男はびっくりです。
 男は逃げ出そうとしましたが、恐怖に足がすくんで動けません。
(わあわあ、もう駄目だ!)
 男は思わず、目をつむりました。
 するとライオンが男のそばへ来て、小さな声で言いました。
「心配するな。わしも人間じゃ。獅子の皮を着て、身代わりの仕事をしているんだ」
 すると男は安心して、自分がトラになっている事も忘れて立ち上がると、
「いやあ、助かった。なんだ、あんたも偽物だったのか」
と、言ってしまい、二匹の猛獣がインチキだった事がばれてしまったのです。

 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

寝ているだけの仕事

むかしむかし、あるところに、働はたらくのが大嫌だいきらいな男おとこがいました。
 
毎日まいにち毎日まいにち、男おとこは家いえで寝ねてばかりいたので、ついにお金かねもお米こめもなくなってしまいました。
(
何なにもかも、なくなってしまったな。まあ、働はたらかないといけないのはわかるが、汗水あせみずたらして働はたらくなんて、まっぴらごめんだ。・・・ああ、どこかに、寝ねているだけの仕事しごとはないかなあ)
 
男おとこが、そんな都合つごうの良よい仕事しごとを探さがしに外そとを歩あるいていると、向むこうから見みせ物もの小屋こやの親方おやかたがやってきました。
 この
見みせ物もの小屋こやの親方おやかたは、珍めずらしい動物どうぶつを見みせる商売しょうばいをしているのです。
「なあ
親方おやかた、どこかに、寝ねているだけで金かねもご飯はんももらえる仕事しごとはないか?」
 とんでもない
相談そうだんですが、それを聞きいた親方おやかたは手てを叩たたいて言いいました。
「ある、ある、あるぞ! 
実じつは今いま、そんな仕事しごとをしてくれる人ひとを探さがしていたところだ」
「へえ。そいつはありがたい。
親方おやかた、ぜひともわしに、その仕事しごとをさせてくれ」
「いいとも、
仕事場しごとばまでついて来こい」
 
男おとこは喜よろこんで、親方おやかたの後のちについて行いきました。

 
親方おやかたは町まちはずれで、獅子しし(しし→ライオン)やトラの見みせ物もの小屋こやを開ひらいていました。
「へえ、これが
見みせ物もの小屋こやか。・・・ところで、おれはどんな事ことをすればいいんだ?」
「なあに、
簡単かんたんさ。ただ、このおりの中なかで寝ねているだけだよ」
「
何なにだって?! 獅子ししやトラと一緒いっしょにか?!」
 びっくりする
男おとこに、親方おやかたは声こえをひそめて言いいました。
「
心配しんぱいするな。実じつはな、少すこし前まえに見みせ物もののトラが死しんでしまって、困こまっていたところなんだ。そのトラの皮かわをはいであるから、お前まえさんはそれを着きて、おりの中なかで寝ねていてくれればいい」
「
何なんだ、トラの身代みがわりか」
「そう
言いう事ことだ。ただ寝ねているだけで、時々ときどきエサをもらい、おまけにお金かねまでもらえるんだ。いい話はなしだろう」
「
確たしかに。なまけ者もののおれにぴったりの仕事しごとだな」
 そんなわけで、
親方おやかたはさっそく男おとこにトラの皮かわを着きせて、おりの中なかへと入いれました。

 トラの
身代みがわりは確たしかに楽らくな仕事しごとで、あっという間まに見世物みせもの小屋こやが終おわる最後さいごの日ひとなりました。
(ああ、
楽らくな仕事しごとだったな)
 
男おとこが寝ねながらそう思おもっていると、集あつまって来きた人ひとたちに親方おやかたが言いいました。
「さあ、
入はいった、入はいった。今日きょうでもうお終おわりいだよ。さて、そこで最後さいごに、トラと獅子ししを一ひとつのおりに入いれて、けんかをさせて見みせようではないか」
 そう
言いって親方おやかたは、隣となりのおりに入いれていたライオンを、トラの毛皮けがわを着きた男おとこのいるおりに連つれて来きたのです。
 さあ、トラの
毛皮けがわを着きた男おとこはびっくりです。
 
男おとこは逃にげ出だそうとしましたが、恐怖きょうふに足あしがすくんで動うごけません。
(わあわあ、もう
駄目だめだ!)
 
男おとこは思おもわず、目めをつむりました。
 するとライオンが
男おとこのそばへ来きて、小ちいさな声こえで言いいました。
「
心配しんぱいするな。わしも人間にんげんじゃ。獅子ししの皮かわを着きて、身代みがわりの仕事しごとをしているんだ」
 すると
男おとこは安心あんしんして、自分じぶんがトラになっている事ことも忘わすれて立たち上あがると、
「いやあ、
助たすかった。なんだ、あんたも偽物にせものだったのか」
と、
言いってしまい、二に匹ひきの猛獣もうじゅうがインチキだった事ことがばれてしまったのです。
 

おしまい

 
 
 
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