章5-第1

章5-第1

 

聴:

 

 

おネズミがお死んでる

 

むかしむかし、ある田舎の娘さんが、町のお金持ちの家へ働きに行きました。

 でも、田舎で育った娘さんは、ていねいな言葉をうまく使うことができません。
 お客さんに、お茶を出すときも、
 「茶を飲め」
 などと言うので、お金持ちのおかみさんは困ってしまいました。
 そこで娘さんに、
「お客さんには、ていねいな言葉を使わなくてはいけません。
 何でも言葉の初めに、『お』という字をつけて言いなさい。
 そうすれば、ていねいな言葉になりますよ」
と、注意したのです。
(茶に『お』をつければ、お茶。なるほど、『お』という字をつければいいんだな)
 それから娘さんは、いろいろな言葉に『お』という字をつけてみました。
 ネコは→おネコ、カラスは→おカラス、カボチャは→おカボチャ。
(これで、もう大丈夫!)
 娘さんは『お』という字をつけた言葉を、早く使いたくてたまりません。
 家の前でウロウロしていたら、ネズミがどぶに落ちて死んでいました。
 娘さんはさっそく、おかみさんの部屋にかけつけて、
「おおかみさん、おネズミがおどぶに落ちてお死んでる」
と、言いました。
 おかみさんと一緒にいたお客さんは、それを聞いて大笑いです。
 お客さんが帰ったあと、おかみさんは娘さんに言いました。
「何でもかんでも、『お』という字をつけてはいけません。役に立つときだけ、『お』の字をつけなさい」
(そうか、役に立つときだけか)
 さて、その晩のこと。
 お金持ちの家族が晩ごはんを食べているところへ、娘さんがお味噌汁を運んできました。
 ふとおかみさんを見ると、おかみさんのおでこに、おひたしのなっぱがついています。
 そこで娘さんは、大声で言いました。
「かみさん、でこにひたしのなっぱがついて、かしいだよ」
(・・・・・・・ああ、この娘には、何と言ったらわかるのだろう)
 おかみさんは、ガッカリして、
「そういう時は、『おかみさん、おでこにおひたしのなっぱがついて、おかしいですよ』と言うんですよ」
と、言い聞かせました。
 すると娘さんは、ニッコリわらって、
「おやっぱり『お』の字をおつけたほうが、おいいんだべ」
と、言ったのです。

 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

おネズミがお死んでる

 

むかしむかし、ある田舎いなかの娘むすめさんが、町まちのお金持かねもちの家いえへ働はたらきに行いきました。
 でも、
田舎いなかで育そだった娘むすめさんは、ていねいな言葉ことばをうまく使つかうことができません。
 お
客きゃくさんに、お茶ちゃを出だすときも、
 「
茶ちゃを飲のめ」
 などと
言いうので、お金持かねもちのおかみさんは困こまってしまいました。
 そこで
娘むすめさんに、
「お
客きゃくさんには、ていねいな言葉ことばを使つかわなくてはいけません。
 
何なにでも言葉ことばの初はじめに、『お』という字じをつけて言いいなさい。
 そうすれば、ていねいな
言葉ことばになりますよ」
と、
注意ちゅういしたのです。
(
茶ちゃに『お』をつければ、お茶ちゃ。なるほど、『お』という字じをつければいいんだな)
 それから
娘むすめさんは、いろいろな言葉ことばに『お』という字じをつけてみました。
 ネコは→おネコ、カラスは→おカラス、カボチャは→おカボチャ。
(これで、もう
大丈夫だいじょうぶ!)
 
娘むすめさんは『お』という字じをつけた言葉ことばを、早はやく使つかいたくてたまりません。
 
家いえの前まえでウロウロしていたら、ネズミがどぶに落おちて死しんでいました。
 
娘むすめさんはさっそく、おかみさんの部屋へやにかけつけて、
「おおかみさん、おネズミがおどぶに
落おちてお死しんでる」
と、
言いいました。
 おかみさんと
一緒いっしょにいたお客きゃくさんは、それを聞きいて大笑おおわらいです。
 お
客きゃくさんが帰かえったあと、おかみさんは娘むすめさんに言いいました。
「
何なんでもかんでも、『お』という字じをつけてはいけません。役やくに立たつときだけ、『お』の字じをつけなさい」
(そうか、
役やくに立たつときだけか)
 さて、その
晩ばんのこと。
 お
金持かねもちの家族かぞくが晩ばんごはんを食たべているところへ、娘むすめさんがお味噌汁みそしるを運はこんできました。
 ふとおかみさんを
見みると、おかみさんのおでこに、おひたしのなっぱがついています。
 そこで
娘むすめさんは、大声おおごえで言いいました。
「かみさん、でこにひたしのなっぱがついて、かしいだよ」
(・・・・・・・ああ、この
娘むすめには、何なにと言いったらわかるのだろう)
 おかみさんは、ガッカリして、
「そういう
時ときは、『おかみさん、おでこにおひたしのなっぱがついて、おかしいですよ』と言いうんですよ」
と、い
聞いきかせました。
 すると
娘むすめさんは、ニッコリわらって、
「おやっぱり『お』の
字じをおつけたほうが、おいいんだべ」
と、
言いったのです。

 

おしまい

 
 

 
 
 
 
 
 
 
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