昔話ー章1ー第4

章1-第4

 

聴:

 

トラとキツネ

 

トラとキツネ

むかしむかし、中国のトラが海を越えて、日本へとやって来ました。 

 日本のキツネは頭が良いと聞いたので、キツネと勝負をしようと思ったのです。 
 トラはキツネを見つけると、さっそく言いました。 
「俺は中国から来たトラだ。何でもよいから、お前と勝負をしたい」 
「ふーん、勝負ねえ」 
 キツネは、竹やぶを見ながら言いました。 
「勝負なら、竹やぶの中での早歩き競争はどうですか? 時間は明日の朝。こっちの竹やぶの端から出発して、反対側の端まで先に到着した方が勝ちです」 
「よし、それはいい」 
 トラは、ニヤリと笑いました。
 トラは竹やぶの中に住んでいるので、竹やぶの中での早歩き競争なら勝ったも同然です。 
 けれどキツネには、ちょっとした考えがあったのです。

 キツネはトラと別れると、すぐに仲間のキツネを集めて早歩き競争の事を話しました。 
「いいか。ここで負けたら、我々日本のキツネの恥になる。 
 そこでだ。
 今夜のうちから、みんなはあちこちに隠れていてほしいんだ。 
 そしてぼくが、
『よーい、どん!』
と、大声で言ったら、ぼくのふりをして先に反対側の端で立っているんだ。 
 中国のトラは、キツネと言う生き物はぼくしかいないと思っている。 
 だから反対側の端にキツネが立っていたら、てっきりぼくが先についたと思ってくやしがるだろうよ」
「よし、わかった」 
 仲間のキツネは、さっそくあちこちに隠れました。

 さて、朝が来ました。 
 トラは大はりきりで、竹やぶの出発点にやって来ました。 
「では、トラさん、始めますよ」 
 キツネはそう言うと、大きな大きな声で 
「よーい、どん!」 
と、言いました。 
 するとトラは、さっそく早足で竹やぶの中を歩き始めました。 
 一緒に歩き始めたキツネを引き離して、ぐんぐんと竹やぶを進んで行きます。 
「わはははは。おろかなキツネめ。このおれにかなうものか」 
 トラは、大笑いです。 
 ところが反対側の端近くに来て、トラはびっくりです。 
 なぜなら、ずっと後ろにいるはずのキツネが、にやにや笑って立っていたからです。 
「なぜだ!」 
 トラはくやしがって、キツネに言いました。 
「もう一度勝負だ。ここから元の場所まで競争しよう!」 
「いいですよ。では」 
 キツネは、大きな大きな声で、 
「よーい、どん!」 
と、言いました。 
 トラは、さっきよりも頑張って、竹やぶの中を進みました。 
「よし、今度こそおれさまの勝ちだ」 
 そう思ったのですが、最初の場所にはすでにキツネが立っています。 
「トラさん。遅かったですねえ」 
 トラは、またまたくやしがり、もう一回、もう一回と、それから七回も競争を繰り返しました。 
 でも、何度やっても同じ事です。
「ちくしょう、おれさまが負けるなんて!」
 くたくたにくたびれたトラは、くやし涙をこぼしながら中国へ帰って行きました。 
 けれど中国に帰ったトラは、キツネに負けた事がどうしてもくやしくて、自分の家来のネコに命令しました。 
「お前たち、日本へ行って、キツネに噛みついてやれ!」 
 でもトラが日本へ送ったネコは、とてもあわてん坊のネコで、『キツネ』と『ネズミ』を聞き間違えて日本に来てしまったのです。 

 それで今でも、ネコはネズミを見つけると、追いかけまわすのだそうです。

 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

トラとキツネ

 

トラとキツネ

むかしむかし、中国ちゅうごくのトラが海うみを越こえて、日本にっぽんへとやって来きました。 
 
日本にっぽんのキツネは頭あたまが良よいと聞きいたので、キツネと勝負しょうぶをしようと思おもったのです。 
 トラはキツネを
見みつけると、さっそく言いいました。 
「
俺おれは中国ちゅうごくから来きたトラだ。何なにでもよいから、お前まえと勝負しょうぶをしたい」 
「ふーん、
勝負しょうぶねえ」 
 キツネは、
竹たけやぶを見みながら言いいました。 
「
勝負しょうぶなら、竹たけやぶの中なかでの早さ歩あるき競争きょうそうはどうですか? 時間じかんは明日あしたの朝あさ。こっちの竹たけやぶの端はしから出発しゅっぱつして、反対はんたい側がわの端はしまで先さきに到着とうちゃくした方ほうが勝かちです」 
「よし、それはいい」 
 トラは、ニヤリと
笑わらいました。
 トラは
竹たけやぶの中なかに住すんでいるので、竹たけやぶの中なかでの早さ歩あるき競争きょうそうなら勝まさったも同然どうぜんです。 
 けれどキツネには、ちょっとした
考かんがえがあったのです。

 キツネはトラと
別わかれると、すぐに仲間なかまのキツネを集あつめて早はや歩あるき競争きょうそうの事ことを話はなしました。 
「いいか。ここで
負まけたら、我々われわれ日本にっぽんのキツネの恥はじになる。 
 そこでだ。
 
今夜こんやのうちから、みんなはあちこちに隠かくれていてほしいんだ。 
 そしてぼくが、
『よーい、どん!』
と、
大声おおごえで言いったら、ぼくのふりをして先さきに反対はんたい側がわの端はしで立たっているんだ。 
 
中国ちゅうごくのトラは、キツネと言いう生いき物ものはぼくしかいないと思おもっている。 
 だから
反対はんたい側がわの端はしたにキツネが立たっていたら、てっきりぼくが先さきについたと思おもってくやしがるだろうよ」
「よし、わかった」 
 
仲間なかまのキツネは、さっそくあちこちに隠かくれました。

 さて、
朝あさが来きました。 
 トラは
大だいはりきりで、竹たけやぶの出発しゅっぱつ点てんにやって来きました。 
「では、トラさん、
始はじめますよ」 
 キツネはそう
言いうと、大おおきな大おおきな声こえで 
「よーい、どん!」 
と、
言いいました。 
 するとトラは、さっそく
早足はやあしで竹たけやぶの中なかを歩あるき始はじめました。 
 
一緒いっしょに歩あるき始はじめたキツネを引ひき離はなして、ぐんぐんと竹たけやぶを進すすんで行いきます。 
「わはははは。おろかなキツネめ。このおれにかなうものか」 
 トラは、
大笑おおわらいです。 
 ところが
反対はんたい側がわの端はし近ちかくに来きて、トラはびっくりです。 
 なぜなら、ずっと
後うしろにいるはずのキツネが、にやにや笑わらって立たっていたからです。 
「なぜだ!」 
 トラはくやしがって、キツネに
言いいました。 
「もう
一度いちど勝負しょうぶだ。ここから元もとの場所ばしょまで競争きょうそうしよう!」 
「いいですよ。では」 
 キツネは、
大おおきな大おおきな声こえで、 
「よーい、どん!」 
と、
言いいました。 
 トラは、さっきよりも
頑張がんばって、竹たけやぶの中なかを進すすみました。 
「よし、
今度こんどこそおれさまの勝がちだ」 
 そう
思おもったのですが、最初さいしょの場所ばしょにはすでにキツネが立たっています。 
「トラさん。
遅おそかったですねえ」 
 トラは、またまたくやしがり、もう
一いち回かい、もう一いち回かいと、それから七なな回かいも競争きょうそうを繰くり返かえしました。 
 でも、
何なん度どやっても同おなじ事ことです。
「ちくしょう、おれさまが
負まけるなんて!」
 くたくたにくたびれたトラは、くやし
涙なみだをこぼしながら中国ちゅうごくへ帰かえって行いきました。 
 けれど
中国ちゅうごくに帰かえったトラは、キツネに負まけた事ことがどうしてもくやしくて、自分じぶんの家来けらいのネコに命令めいれいしました。 
「お
前まえたち、日本にっぽんへ行いって、キツネに噛かみついてやれ!」 
 でもトラが
日本にっぽんへ送おくったネコは、とてもあわてん坊ぼうのネコで、『キツネ』と『ネズミ』を聞きき間違まちがえて日本にっぽんに来きてしまったのです。 

 それで今いまでも、ネコはネズミを見みつけると、追おいかけまわすのだそうです。

おしまい

 

 

 

NHẬN XÉT

 
 

 
 
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